
血糖値は今の数値さえ良ければ安心、というわけではないかもしれません。近年注目されているのが、過去の高血糖が体に「記憶」として残り、後から血糖値を整えても合併症が進行し続けてしまう「メタボリックメモリー」という現象です。今回は、その主犯とされるAGEs(終末糖化産物)について解説します。
AGEsとは――体を糖化させる老化物質
AGEs(Advanced Glycation End-products:終末糖化産物)は、体内のタンパク質と余分な糖が結びついてできる物質です。一度できると分解されにくく、体内に蓄積していく性質があります。
AGEsが厄介なのは、蓄積するだけでなく、細胞表面にある「RAGE」という受容体と結合し、強い炎症反応を引き起こす点です。血管の内側の細胞が傷つけられることで動脈硬化が進んだり、目の毛細血管を支える細胞が傷つけられたりすることが報告されています。さらに、神経と筋肉をつなぐ部分にある「カルシウムチャネル」というタンパク質まで糖化されて構造がゆるみ、筋力低下の一因になる可能性も指摘されています。こうした積み重ねが、認知機能の低下や心不全、サルコペニアなど、複数の疾患を連鎖的に引き起こす背景にあると考えられています。
市販の測定器では見逃されることも
AGEsは皮膚に光を当てて簡易的に測定できる機器も市販されていますが、注意点があります。毒性の強い「非蛍光性AGEs」は、こうした簡易測定では見逃されてしまうことがあるのです。また、喫煙者では数値が見かけ上低く出てしまう「マスキング現象」も知られています。数値だけを過信せず、あくまで参考値の一つとして捉えることが大切です。
日常でできるAGEs対策
AGEsは食事の内容や調理法によって体内での増え方が変わることが分かっています。日常生活で意識できる工夫として、次のようなものがあります。
- 揚げ物・焼き物を減らし、「茹でる・蒸す・生で食べる」調理法を選ぶ
- 唐揚げなど高温調理する料理は、レモンなど酸性の調味料でマリネしておく
- 野菜から先に食べる「カーボラスト」を意識する
- こまめに体を動かす「NEAT(非運動性活動熱産生)」を増やす
どれも特別な準備がいらない、日々の小さな積み重ねです。
お口の健康とも無関係ではない
血糖コントロールの乱れは、歯周組織の炎症を悪化させやすくすることが知られています。逆に、歯周病による慢性炎症が血糖コントロールを乱す方向に働くこともあり、両者は影響し合う関係にあります。AGEsによる全身の炎症を抑える生活習慣は、お口の健康を守ることとも重なり合っていると言えるでしょう。
当院では、お口の状態のチェックに加え、血液検査や唾液検査を通じて、全身の炎症・老化リスクを一緒に読み解くカウンセリングを行っています。気になる症状や不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
監修:手塚充樹(ヘルシーライフデンタルクリニック 院長・歯科医師/博士(歯学))












